経営が欲しい要員計画・現場が欲しい要員計画・人事が作れる要員計画
「要員計画を作ろう」という号令のもとに、経営・現場・人事が同じ会議室に集まる。ところが話が進むほど、なぜか噛み合わない——という光景をよく見ます。誰かがサボっているわけでも、能力が足りないわけでもありません。同じ「要員計画」という言葉で、三者がまったく別のものを想像しているからです。
私は人事として16年、この会議室の真ん中にずっといました。この記事では、経営・現場・人事がそれぞれ欲しがっている要員計画を、対立ではなく「構造のズレ」として整理してみます。ズレの正体が見えると、何を揃えれば話が進むのかが見えてきます。
経営が欲しいのは「コストと戦略に整合した計画」
経営から見た要員計画は、事業戦略と人件費の接続点です。関心は、個々のポジションの充足よりも、次のような問いにあります。
- 来期の事業計画を実現するために、人にいくら投じるのが妥当か
- その投資は、成長領域に振り向けられているか
- 全社の人件費は、売上・利益の見通しと整合しているか
経営が要員計画に求めるのは、戦略の実行可能性を数字で確認できることです。だから経営の視点では、一人ひとりの欠員より「どの事業に、どんな能力を、どれだけ厚く配分するか」という配分の絵が欲しくなります。
現場が欲しいのは「今の欠員が埋まる計画」
一方、現場のマネージャーが要員計画に期待するのは、もっと切実で具体的です。
- 先月退職した人の穴を、いつ埋めてもらえるのか
- 繁忙期を乗り切る人手が確保できるのか
- 今抱えている業務が回る体制になるのか
現場にとって要員計画は、来期の戦略の話である前に、目の前の業務が回るかどうかの話です。抽象的な能力配分の議論より、「この欠員、結局どうなるんですか」という一点が最大の関心事になります。この期待は正当で、現場が回らなければ戦略も絵に描いた餅です。
人事が作れるのは「手元のデータで書ける計画」
そして人事は、この経営と現場の期待の板挟みの中で、実際に手を動かして計画を形にする立場です。ところが人事が作れる計画には、現実的な制約があります。
- 手元のデータは、たいてい頭数と職位までしか整っていない
- 「誰が何をできるか」という能力の情報は、システムに入っていないことが多い
- 複数部門から集めた数字は、粒度も定義もバラバラで、突き合わせに時間がかかる
つまり人事は、経営が求める「戦略と整合した能力配分」も、現場が求める「今の欠員の解消」も分かっているのに、手元のデータの制約の中でしか計画を書けない。頭数の表なら作れるが、能力の計画は作りたくても材料がない、という状態です。データ側の前提整備については人事データの棚卸し——要員計画の前提整備で触れています。
ズレの正体は「見ている時間軸と粒度」の違い
三者を並べると、ズレの構造が見えてきます。
- 経営:長い時間軸・粗い粒度(事業単位の能力配分とコスト)
- 現場:短い時間軸・細かい粒度(今のこのポジション)
- 人事:その両方の翻訳者でありながら、データの制約に縛られている
厄介なのは、この三者が同じ「要員計画」という一枚の表を巡って議論することです。経営は配分の絵を見たいのに、表は個別ポジションで埋まっている。現場は自部門の欠員を見たいのに、表は全社集計になっている。人事はどちらにも応えたいのに、手元のデータは頭数までしかない。一枚の表に三者の期待が重なって、全員が少しずつ不満を持つことになります。
必要なのは「翻訳」と「共通の土台」
このズレは、誰かが正しくて誰かが間違っているという話ではありません。三者の期待はどれも正当です。必要なのは、対立を勝ち負けにせず、同じ土台の上で翻訳し合うことです。
土台になるのは、私は能力(Capability)だと考えています。経営が語る「成長領域への配分」も、現場が語る「この欠員」も、突き詰めれば「どんな能力が、どこに、どれだけ必要か」に翻訳できます。頭数だけの表では、経営の戦略も現場の切実さも表現しきれません。能力を軸に置くと、経営の粗い絵と現場の細かい要望が、同じ言葉の上で並べられるようになります。
そのうえで、人事の役割は翻訳者です。経営の言葉を現場の欠員に、現場の欠員を経営の配分の絵に翻訳する。この翻訳を成立させるには、能力という共通の土台と、その能力を扱えるデータの整備が要ります。要員計画そのものの定義については要員計画とは何か——人員計画・採用計画・配置計画との違いもあわせてどうぞ。
まとめ
- 経営・現場・人事は、同じ「要員計画」という言葉で別のものを想像している
- 経営はコストと戦略整合、現場は今の欠員補充、人事はデータの制約内でしか書けない、という構造のズレがある
- ズレの正体は「見ている時間軸と粒度」の違い。誰も間違っていない
- 三者をつなぐ共通の土台は能力(Capability)。人事はその翻訳者になる
私は現在、この「Capability起点の要員計画・実行管理」を形にするSaaS(Sakigake Workforce)を複業で開発しています。経営・現場・人事の期待がずれて要員計画が進まない、という手応えのある方は、下の窓口からお気軽にご相談ください。現場の言葉で一緒に整理します。
Sakigake Workforce
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