「ポジションベース」の組織図が要員計画を縛る
要員計画をつくるとき、多くの現場はまず組織図を開きます。部署があり、その下に職位があり、そこに何人という箱が並んでいる。この箱を「来期はどう埋めるか」と考えるところから計画が始まります。
自然な手順に見えますし、実際どの会社もここから入ります。ただ、人事として16年、採用・評価・労務・組織設計に関わってきて感じるのは、この「箱を埋める」発想そのものが、要員計画を静かに縛っているということです。この記事では、ポジションベースの組織図が持つ限界と、その先の視点を整理します。
ポジションベースとは、箱で組織を描くこと
ここでいうポジションベースとは、「部署 × 職位」で組織を定義し、その箱に人を割り当てていく考え方です。営業部・部長・1名、営業部・課長・2名、営業部・担当・8名——こうした箱の集合として組織を捉えます。
この描き方は、給与体系や職務等級との相性がよく、頭数の管理には便利です。予算とも紐づけやすい。だからこそ長く使われてきましたし、これ自体が悪いわけではありません。問題は、組織図の箱を埋めることと、事業が前に進むことが、いつの間にか同じものだと錯覚されてしまう点にあります。
箱は埋まったのに、事業が進まない
「今期は増員が認められて、営業部の課長ポストも担当も全部埋まった」。それなのに、狙っていた新規領域の立ち上げは一向に動かない——こういう光景をよく見ます。
理由はシンプルで、箱は「営業部・課長」という肩書きしか語らないからです。その課長が、既存顧客の深耕は得意でも、ゼロから市場を切り拓いた経験がないなら、頭数の上では埋まっていても、必要な仕事は誰も担えていません。組織図は満席なのに、やるべきことに手が付いていない。この状態は、箱を数えている限り数字の上には決して現れません。
同じことは、統合や新規事業でよく表面化します。「箱は前年どおり用意した。でも、この事業を回すには箱の名前に書かれていない能力がいる」。組織図を眺めても、その能力が足りているかどうかは読み取れないのです。
箱は「何ができるか」を語らない
ポジションベースの根本的な限界は、箱が職位という「入れ物」しか表現できないことにあります。
「営業部・課長・1名」という行は書けても、「新規事業の立ち上げを一人で回せる人」「複数部門の利害を調整して合意まで持っていける人」「ベンダーの言葉を現場の言葉に翻訳できる人」という行は、組織図の中に居場所がありません。事業を実際に動かしているのは、こうした能力の束のほうなのに、です。
要員計画がこの箱の上で組み立てられると、計画は自動的に「頭数の計画」に縮んでいきます。何人足りない、何人採る、という話にはなっても、「何ができる人が足りていないのか」という問いは、そもそも表に載せる欄がありません。要員計画と人員計画(頭数の計画)の違いについては、要員計画とは何か——人員計画・採用計画・配置計画との違いでも整理しています。
箱から「能力の束」へ視点をずらす
では箱を捨てればいいかというと、そうではありません。職位や部署は、給与・等級・指揮命令の器としてはこれからも必要です。変えるべきなのは、要員計画を考えるときの出発点を、箱から能力に移すことです。
実務的には、こんな順番で考えるのが扱いやすいと感じています。
- 事業計画から「必要な仕事」を書き出す — 来期この事業で何を実現するのか。そのために誰かが担わなければならない仕事は何か
- それを「何ができる能力」に翻訳する — 職位名ではなく、「〜ができる」という能力(Capability)の言葉にする
- 今いる人が何を持っているかと突き合わせる — 箱の充足率ではなく、能力の充足率で見る
- 足りない能力を、箱の設計や打ち手に落とす — ここで初めて「どの箱を増やすか」「誰を異動させるか」「何を採るか」が決まる
順番が逆になっていないかがすべてです。箱を先に決めて後から人を流し込むのではなく、必要な能力を先に定義して、箱はそれを収める器としてあとから設計する。この向きの入れ替えだけで、「箱は埋まったのに進まない」という現象はかなり見えやすくなります。この能力起点の考え方はCapability起点の要員計画——定義と最小の始め方で、始め方まで含めてまとめています。
まとめ
- ポジションベース(部署×職位の箱)は頭数管理には便利だが、要員計画の出発点にすると計画が「頭数の計画」に縮む
- 箱は「何ができるか」を語らないため、「箱は埋まったのに事業が進まない」が構造的に起きる
- 箱そのものを捨てる必要はない。変えるのは出発点で、「必要な能力 → それを収める箱」の順に考え直す
私は現在、この「Capability起点の要員計画・実行管理」を形にするSaaS(Sakigake Workforce)を複業で開発しています。組織図の箱を埋める作業に手応えのなさを感じている方は、下の窓口からお気軽にご相談ください。現場の言葉で一緒に整理します。
Sakigake Workforce
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