要員計画SaaSを自分で作りながら考えた「最小限の機能」
要員計画のSaaSを複業で開発しています。開発中の身なので、機能の宣伝をする記事ではありません。むしろ逆で、「要員計画ツールに本当に必要な機能って、実は少ないのでは」という設計思想の話です。
HRテックは、放っておくと機能が増えます。比較表の項目が多いほうが立派に見えるし、要望を集めれば集めるほど「あれもこれも」になる。でも、人事16年のなかで導入する側を長くやってきて、機能が多いことと現場で使われることは別だと痛感してきました。だから作る側に回ったいま、あえて「最小限の骨格は何か」から考えています。
「あれもこれも」で肥大するHRテックへの違和感
Workday や ServiceNow のような大きなシステムの全社導入をPMとして経験して分かったのは、使われない機能がいかに多いか、ということです。導入時には「あったほうがいい」で入れた機能が、運用が始まると誰も触らない。設定は複雑になり、学習コストだけが残ります。
機能が多いこと自体は罪ではありません。問題は、本当に効く数個の機能が、大量のオプションの中に埋もれてしまうことです。要員計画に限って言えば、現場が本当に必要としているのは、驚くほど少ない気がしています。
では、その少ない骨格とは何か。私はいまのところ、次の3つだと考えています。
骨格① 計画と実績が同じ場所にある
要員計画がExcelで死ぬ典型は、「期初に作った計画が、期中に一度も開かれない」ことです。採用の進捗、異動、退職——現実は毎週動くのに、計画のExcelは静止画のまま。計画と実行管理が別々の場所にあるから、計画がすぐ現実と乖離し、放置されます。
だから最初の骨格は、計画と実績が同じ場所にあることです。「予定していた採用が何人決まったか」「異動がどこまで実施されたか」を、別のシートではなく計画そのものの上で確認できる。この一点だけで、計画は「作って終わり」から「使い続けるもの」に変わります。逆に言えば、ここが分離しているツールは、どれだけ機能が豊富でも要員計画の本質を外していると感じます。
骨格② Capabilityで語れる
Excelの行は「部署 × 職位」で切られがちです。「営業部・課長・1名」は書けても、「新規事業を立ち上げられる人が必要」とは書けない。だから頭数は揃うのに事業が進まない、という状況が起きます。
要員計画と人員計画の違いは、能力(Capability)が入っているかどうかです。この点は要員計画とは何かに詳しく書きました。ツールの骨格として言えば、頭数だけでなくCapabilityで必要人材を語れることが要ります。
これは項目を一つ足せば済む話ではありません。ポジションの箱ではなく「何ができる状態が必要か」を中心に据える、という設計思想の問題です。ここを外すと、どれだけUIが綺麗でも、結局は頭数の表計算に戻ってしまいます。
骨格③ 誰が何を承認したか残る
要員計画は意思決定の連続です。「なぜ営業部は+3人なのか」「なぜこのCapabilityを優先したのか」。担当者が異動した瞬間、この判断の理由がどこにも残っていないと、計画は遺跡になります。
だから3つ目の骨格は、誰が・何を・いつ承認したかが残ることです。数字の結果だけでなく、その数字に至った判断と承認の履歴が追える。これがあると、翌期にゼロから作り直す必要がなくなり、引き継ぎもできる。要員計画を「その場限りの表」から「積み上がる資産」に変えるのが、この履歴です。
「最小限」を守ることが、いちばん難しい
この3つ——計画と実績が同じ場所にある、Capabilityで語れる、承認の履歴が残る——が、私の考える要員計画ツールの最小の骨格です。逆に言えば、これ以外の機能は「あると便利」であって「ないと成立しない」ものではない、と一度疑ってみる価値があります。
作っていて一番難しいのは、機能を足すことではなく、足さないことです。AIを使って開発していると、提案はいくらでも出てきます。でも「これは骨格を強くするのか、それとも肥大させるだけか」を毎回問い直す。この判断のよりどころが、導入する側で見てきた「使われない機能の山」の記憶です。何を作らないかを決められることが、最小限を守る唯一の方法だと思っています。
まとめ
- HRテックは機能が増えやすいが、機能の多さと現場で使われることは別
- 要員計画ツールの最小の骨格は、①計画と実績が同じ場所にある ②Capabilityで語れる ③誰が何を承認したか残る、の3つだと考えている
- それ以外は「あると便利」であって「ないと成立しない」ものではない、と一度疑う
- 難しいのは機能を足すことより、足さないこと。何を作らないかを決められることが最小限を守る鍵
私は現在、この考え方で「Capability起点の要員計画・実行管理」を形にするSaaS(Sakigake Workforce)を複業で開発しています。自社の要員計画で「これは骨格なのか、贅肉なのか」を一緒に整理したい方は、下の窓口からお気軽にご相談ください。
Sakigake Workforce
Capability起点の要員計画・実行管理SaaSを開発しています。要員計画の運用にお悩みの方は、30分のオンライン相談で現場の言葉から一緒に整理します。