Workday・ServiceNowの導入PMを経験して学んだ、HRテック選定で最初に確認すべき5つのこと
HRテックの選定は、たいてい機能比較表から始まります。ベンダー各社のデモを見て、○×表を作って、価格を並べる。私も最初はそうやっていました。
しかし、Workday(HCM/LMS)や ServiceNow の全社導入を、現場と開発の間に立つPMとして経験して分かったのは、選定の成否は機能比較表の外側でほぼ決まっているということです。15名以上の部門横断チームでデータ移行までやり切った経験から、機能比較より先に確認すべき5つを整理します。
1. 解きたい課題を「業務の言葉」で書けているか
選定が迷走するプロジェクトは、要件が「タレントマネジメントを強化したい」のような抽象語で止まっています。ベンダーのデモはどの製品も魅力的に見えるので、抽象的な要件のままだと全部良く見えて選べないか、声の大きい人の直感で決まるかのどちらかになります。
「評価のたびにExcelを300人分回収して突合している」「異動履歴が3つのシステムに分散していて退職リスクの分析ができない」——このレベルまで具体化してから比較を始めると、製品ごとの差が急に見えるようになります。
2. 導入後に「運用する人」が決まっているか
導入プロジェクトには予算も人も付きますが、運用フェーズは「今の人事チームが片手間で」となりがちです。ここで確認すべきは体制図ではなく、マスタ変更・権限管理・年次イベント設定を誰が手を動かしてやるのかという具体名です。
グローバル製品は思想として「設定で業務に合わせる」ようにできています。設定できる人が社内にいなければ、変更のたびにベンダーへ依頼することになり、費用と時間が運用を圧迫します。選定段階で「自分たちで設定を触れるようになるまでの学習コスト」を製品ごとに見積もっておくべきです。
3. 今あるデータの状態を直視したか
導入プロジェクトで最も時間を食うのは、システムの構築ではなくデータ移行です。そして移行の工数は、新システムの性能ではなく「今のデータがどれだけ汚れているか」で決まります。
組織コードの体系が部門ごとに違う、同姓同名の従業員データが手作業で区別されている、休職履歴が紙にしかない——こうした現実は、デモ環境の綺麗なサンプルデータからは見えません。選定と並行して自社データの棚卸しを始めると、移行費用の見積もりが現実的になり、ベンダーとの会話も具体的になります。
4. 「翻訳者」がプロジェクトにいるか
ベンダーは製品の言葉(ポジション管理、ビジネスプロセス、セキュリティグループ…)で話し、現場は業務の言葉(発令、稟議、兼務…)で話します。この2つの言葉は、想像以上に噛み合いません。
導入がうまくいくかどうかは、両方の言葉を話せる人がプロジェクト内にいるかに大きく左右されます。社内にいなければ、パートナー会社の担当者にその役割を期待できるかを面談で確かめる。「御社の業務でいうと〜」という翻訳が自然に出てくる担当者かどうかは、提案書からは分かりません。
5. 段階導入の設計をベンダーと話せたか
全モジュール一斉導入は、計画上は美しく見えますが、現場の変化許容量を超えがちです。まず人事マスタと組織管理だけ、次に評価、その次にタレント——と段階を刻む設計ができるか。そして段階を刻んだ場合の費用構造がどうなるかを、選定段階で確認しておくべきです。
ここを曖昧にしたまま契約すると、「使っていないモジュールのライセンス費」を払い続けることになります。
まとめ
- 機能比較の前に:課題の具体化・運用者の特定・データの現状把握
- 選定の面談で見るべきは:翻訳者の存在・段階導入への柔軟性
- デモの印象は判断材料として弱い。自社の具体的な業務データ・業務シナリオで試せるかを交渉する
なお、システム導入の上流には要員計画の整理が必要になることが多いです。あわせて要員計画とは何か、要員計画がExcelで破綻する5つの瞬間もどうぞ。
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