「来期、何人必要?」に即答できない人事は悪くない——問いが頭数で止まっているから
「来期、何人必要?」——経営会議でこう聞かれて、その場で数字を返せなかった経験のある人事の方は多いと思います。そして会議のあと、「うちの人事は要員計画すら即答できない」と受け取られてしまう。心当たりのある光景ではないでしょうか。
先にお伝えしたいことがあります。即答できないのは、あなたの準備不足でも能力不足でもありません。問いのほうに欠けているものがあるからです。この記事では、人事として16年やってきた立場から、なぜ即答が難しいのかを言葉にし、経営との対話をどう組み替えるかを整理します。
なぜ「何人」に即答できないのか
「来期、何人必要?」という問いは、一見シンプルです。でも誠実に答えようとすると、頭の中で無数の前提が立ち上がります。
- どの事業がどれくらい伸びる前提の「何人」なのか
- 今いる人が来期も同じ働きをしてくれる前提なのか(退職や異動は?)
- 育成で伸びる分をどう織り込むのか
- 「営業を増やす」の営業は、既存顧客対応なのか新規開拓なのか
これらを飛ばして数字だけ返せば、それはただの当て推量です。真面目な人ほど即答できません。即答できないのは、問いが複雑な現実を「何人」という一語に圧縮しているからです。圧縮された問いに、圧縮されていない現実を持っている人事が詰まるのは、むしろ自然なことです。
「何人」は答えではなく、翻訳の結果でしかない
ここが本質だと思っています。頭数は、計画の出発点ではなく結論です。
事業が来期に何を実現したいのか。そのために何ができる状態が必要なのか。今それが社内にどれだけあるのか。足りない分を採用・育成・異動のどれで埋めるのか。——これらを積み上げた最後に、頭数という数字が出てきます。
だから「何人?」にいきなり答えるのは、方程式を解かずに答えだけ言え、と言われているようなものです。答えられないのは当然で、順番が飛んでいるだけなのです。この頭数と能力の関係は要員計画とは何かでも整理しています。
問いを「何ができる人が、何人」に組み替える
では会議でどう振る舞うか。数字で殴り返す必要はありません。問いを一段ほどいて返すのが、実務的な打ち手です。
たとえば「来期、何人必要?」に対して、こう返します。
「頭数でお答えする前に、来期この事業で"何ができる状態"を作りたいかを一緒に整理させてください。そこが決まれば、今いる人で足りる分と、採用・育成で埋める分が分かれます。頭数はその後に自然と出ます」
これは論点をずらしているのではありません。経営が本当に欲しいのは頭数ではなく、事業が回る状態だからです。頭数は、その状態を予算の言葉に翻訳したものにすぎません。問いを能力の言葉に組み替えると、会話がぐっと具体的になります。
- 「営業を5人」ではなく「新規開拓を自走できる営業を、来期上期までに機能させたい」
- 「エンジニアを10人」ではなく「この新機能を内製で保守できる体制を作りたい」
こう置き換えると、経営も「それなら採用より、まず今のAさんとBさんを回せないか」といった具体の議論に入れます。頭数の問答よりずっと生産的です。
その場で完璧な数字を出そうとしない
もうひとつ、肩の力を抜いていい点があります。要員計画は、期初に一発で正解を出すものではありません。事業も人も期中に動くので、計画は動かしながら精度を上げていくものです。
「今この場で確定値を出せ」というプレッシャーに応えようとすると、当て推量の数字を口にしてしまい、それが独り歩きします。むしろ「今の前提だと粗くこのくらい、精緻化して来週戻します」と、前提つきの暫定値と更新の約束をセットで返すほうが、結果的に信頼されます。数字の確からしさは、更新され続けることで担保されるからです。
まとめ
- 「来期、何人必要?」に即答できないのは、人事の怠慢ではなく、問いが「何人」に圧縮されているから
- 頭数は計画の出発点ではなく結論。能力の積み上げの最後に出てくる翻訳結果
- 会議では問いを「何ができる人が、いつ、何人」に組み替えて返す。経営が本当に欲しいのは頭数ではなく事業が回る状態
- その場で確定値を出そうとせず、前提つきの暫定値と更新の約束で返す
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