要員計画ツールを入れる前に、Excelのままやるべき3ステップ
「要員計画がうまくいかないので、ツールを探しています」——という相談をよく受けます。気持ちはよく分かります。Excelのファイルが乱立し、集計に何日もかかり、翌期はまたゼロから作り直し。この繰り返しに疲れると、専用ツールがすべてを解決してくれるように見えてきます。
ですが、人事として16年、そしてWorkdayやServiceNowの全社導入をPMとしてやり切った経験から言えるのは、Excelで回らない運用は、ツールを入れても回らないということです。ツールは、すでに回っている運用を速く・正確にするものであって、運用そのものを作ってはくれません。
だからこそ、ツールを検討する前にExcelのままでやっておくべき3ステップがあります。ここが回れば、ツール導入の判断も、ツールへの要件も、驚くほど具体的になります。
ステップ1:必要なCapabilityを言葉にする
最初にやるのは、頭数を数えることではありません。事業計画から「何ができる状態が必要か」を能力(Capability)で書き出すことです。
「営業部・課長・1名」ではなく、「新規開拓の商談を一人で立ち上げられる」「代理店との交渉を任せられる」——このレベルまで言葉にします。職位や部署名で書くと、箱を埋める計画にはなっても、事業を動かす計画にはなりません。
これはExcelで十分できます。むしろツールより先に、この言語化を人の頭でやり切ることが要です。ここが曖昧なままだと、どんなツールを入れても「箱と頭数の管理」に戻ってしまいます。考え方の詳細はCapability起点の要員計画——定義と最小の始め方にまとめています。
ステップ2:現有のCapabilityを棚卸しする
次に、今いる人が何を持っているかを棚卸しします。ステップ1で書き出したCapabilityの一覧に対して、「これは誰ができるか」を突き合わせていく作業です。
ここで大事なのは、ステップ1の言葉で棚卸しすることです。既存のスキル項目や資格の一覧から始めると、事業に必要な能力とずれた棚卸しができあがり、後で使えません。必要なCapabilityを軸に、今の充足状況を見る。この順番を守ります。
現有の棚卸しは、この段階ではExcelで問題ありません。ただし、項目を増やしすぎると更新されなくなって放置されます。この失敗のメカニズムはスキルマップが3ヶ月で放置される理由と、続く設計で詳しく書きました。最初は粗くていいので、事業に効くCapabilityに絞ることをおすすめします。
ステップ3:ギャップに打ち手を割り当てる
必要なCapability(ステップ1)と、現有(ステップ2)を並べれば、ギャップが見えます。最後のステップは、そのギャップ一つひとつに打ち手を割り当てることです。
打ち手は主に4つです。
- 採用:外から採る。時間もコストもかかる、最も高いカード
- 育成:今いる人を伸ばす。時間はかかるが定着しやすい
- 異動・配置:社内の別の場所にいる能力を動かす。最も安いことが多い
- 外部活用:業務委託・パートナーで一時的に埋める
ここで意識したいのは、打ち手ごとに「なぜそれを選んだか」を一言残すことです。Excelでも欄を一つ足せば書けます。この理由が残っていないと、担当者が変わった瞬間に計画の背景が消えます。
この1〜3のサイクルが、粗くてもExcelで一周回せるか。ここがツール導入判断の前提です。
ツールが必要になる兆候
では、いつExcelを卒業すべきか。私は次の兆候が出たら検討時だと考えています。
- 複数部門が同時に編集し始めたとき:ファイルの奪い合いと「最新版はどれ問題」が起き、バージョン管理が破綻します。表計算は本来、同時多人数編集の設計思想を持っていません。
- 計画と実行がつながらなくなったとき:採用進捗・異動・退職を計画に反映し続けたいのに、実行の情報が別のファイルや別のシステムにあって手で転記している。この分断が続くと計画は静止画になります。
- 判断の履歴を残したいとき:「なぜこの計画になったか」を、担当者の記憶ではなく仕組みに残したくなったら、Excelの限界です。
逆に言えば、これらの兆候が出る前は、Excelで運用を磨くほうが投資対効果が高い場面が多いです。ツールは、回っている運用を載せ替えるものだからです。
まとめ
- ツールを入れる前に、Excelで①必要Capabilityの言語化②現有の棚卸し③ギャップへの打ち手割り当て、を一周回す
- Excelで回らない運用は、ツールを入れても回らない。ツールは運用を作らない
- 導入の兆候は「複数部門の同時編集」「計画と実行の分断」「判断履歴を残したいニーズ」
この3ステップを回してみると、自社に本当に必要なツール要件が具体的になります。私は現在、この「Capability起点の要員計画・実行管理」を形にするSaaS(Sakigake Workforce)を複業で開発しています。Excelでどこまでやり、どこからツールに移すべきか迷っている方は、下の窓口からお気軽にご相談ください。「導入する側」を16年やった立場で、一緒に整理します。
Sakigake Workforce
Capability起点の要員計画・実行管理SaaSを開発しています。要員計画の運用にお悩みの方は、30分のオンライン相談で現場の言葉から一緒に整理します。